フランチャイズ加盟を決めたあと、多くの人が迷うのが「個人事業主として開業するか、法人を設立するか」です。結論から言うと、初年度から大きな利益が見込めるケースや多店舗展開を前提とするケース以外は、個人事業主スタートで問題ないことがほとんどです。この記事では判断基準を5つの観点で整理します。
個人事業主と法人の比較
| 観点 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 開業手続き | 開業届のみ(無料・即日) | 設立登記(約6〜25万円・1〜2週間) |
| 税率 | 所得税(累進5〜45%) | 法人税(実効約23〜34%) |
| 赤字の繰越 | 3年(青色申告) | 10年 |
| 社会保険 | 国保・国民年金 | 社会保険加入義務(会社負担あり) |
| 経理・申告 | 比較的簡単 | 決算・法人税申告(税理士費用の目安 年20〜40万円) |
| 対外信用 | 劣る場合がある | 高い(物件契約・法人取引で有利) |
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判断の5つの観点
1. 税金:利益800万円前後が目安
所得税は累進課税のため、利益が大きいほど法人が有利になります。一般に事業利益800万〜900万円が法人化の損益分岐と言われますが、社会保険料・税理士費用も含めた総額で判断が必要です。開業初年度からこの水準を超える見込みがなければ、個人スタートで十分です。
2. 融資:大差はない
日本政策金融公庫の創業融資は、個人・法人どちらでも受けられます。審査で見られるのは事業計画と自己資金・経歴であり、法人であること自体が有利にはたらく度合いは限定的です。
3. 物件契約:業態による
テナントを借りる業態では、貸主によっては法人契約を求められる場合があります。狙っている物件クラス(路面・商業施設)がある場合は、本部に過去の加盟店の契約形態を確認しましょう。
4. 撤退時の責任:実は大差がないことも
法人は有限責任ですが、創業期の融資や物件契約では代表者の連帯保証を求められるのが一般的です。「法人にすれば個人資産は守られる」とは限らない点に注意してください。
5. 多店舗展開の予定
2店舗目以降の展開を最初から計画しているなら、雇用・資金調達・許認可の面で法人が動きやすく、最初から法人設立する合理性があります。
本部側が「個人か法人か」を条件にしている実例
個人か法人かは自分の都合だけでなく、本部が加盟資格として指定している場合があります。当メディアに掲載している本部の公式サイトから、記載の例を挙げます(確認日は各ブランドのページに明記)。
| 本部の記載 | 業種 |
|---|---|
| 「個人・法人どちらでも可」(契約期間5年) | 整体・リラクゼーション |
| 対象者は「個人事業主 法人(法人は詳細要問合せ)」。加盟金の限定価格は個人事業主のみ対象 | まつげエクステ |
| 「個人事業主様のサイドビジネスとして、また法人様の新規事業にも最適」 | まつげエクステ |
| 個人向け・法人向け・業界経験者向けの3つの募集ページを分け、法人には投資型プランを用意 | 整体・リラクゼーション |
| 「副業・兼業から専業・法人の新規事業まで」テリトリーの世帯数でプランを分ける | 買取 |
| 「全国の個人、法人」を対象に、2名専従を条件にしている | ハウスクリーニング |
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「個人事業主のみ」の限定価格や、「法人限定」の募集は珍しくありません。加盟を検討する本部が個人・法人のどちらを想定しているかを、税金の損得より先に確認してください。
法人化のタイミング:3つの分岐点
「いつ法人にするか」は、独立・開業の前後で3つの分岐点があります。それぞれで法人化する理由と、注意点が違います。
分岐点1:FC契約を結ぶ前に法人を作る
最初から法人で加盟する選び方です。向いているのは、(a) 最初から2店舗目以降を計画している、(b) 狙っている物件が法人契約を求めている、(c) 本部が法人限定で募集している、のいずれかに当てはまる人です。
注意点は、開業前に法人設立の費用と手間がかかること、そして設立直後の法人は実績がないため、創業融資や物件契約で結局は代表者個人の信用と連帯保証で判断されることです。「法人にしたから審査が通りやすくなる」とは限りません。
分岐点2:個人で開業し、利益が出てから法人成りする
最も多いパターンです。個人事業主で加盟し、事業利益が800万〜900万円の水準に近づいた時点で法人成りを検討します。開業初年度は売上の見込みが立たないため、開業コストと管理負担の軽い個人で始め、数字が見えてから判断するのが合理的です。
注意点は、FC契約の名義が個人のままだと、法人成りのときに契約の巻き直しが必要になることです(次の「FC契約上の注意点」参照)。契約前に「将来法人成りする可能性がある」と本部に伝えておけば、名義変更の条件や手数料を事前に確認できます。
分岐点3:2店舗目を出すときに法人にする
1店舗目が軌道に乗り、2店舗目の出店や人の雇用が増える段階で法人にするパターンです。複数店舗の資金調達、従業員の社会保険、店舗ごとの許認可の管理は法人のほうが動きやすく、本部側も「2店舗目からは法人で」と求める場合があります。当メディア掲載本部の中には、公式サイトで「2店舗目の加盟金は0円」「2店目からはロイヤリティ月5万円」のように多店舗展開を前提にした条件を公開している本部があり、こうした本部は2店舗目のタイミングで法人化の相談をしやすい傾向があります。
法人化にかかる費用と手続きの目安
法人成りには、株式会社なら定款認証と登録免許税(最低15万円)、合同会社なら登録免許税(最低6万円)がかかり、司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。設立後は法人の税務申告(多くの場合は税理士費用)、役員報酬に対する社会保険料の負担が毎年かかります。個人事業主のときには不要だったこれらの固定費が、法人化の損益分岐を800万〜900万円まで押し上げる要因です。金額は自治体や依頼先によって変わるため、開業時に税理士へ確認してください。
FC契約上の注意点
- 契約主体の変更:個人で加盟して後から法人成りする場合、FC契約の名義変更(契約巻き直し)が必要です。本部によっては手数料や再審査があるため、法人成りの可能性を契約前に本部へ伝えて、条件を確認しておくことをおすすめします
- 許認可の引き継ぎ:飲食店営業許可などは法人成りで取り直しになります
まとめ
- 迷ったら個人事業主スタートが原則。開業コストと管理負担が軽い
- 利益800万円超の見込み・多店舗展開前提・法人契約必須の物件、のいずれかに該当するなら法人設立を検討
- 法人化のタイミングは「契約前」「利益が出てから」「2店舗目」の3つ。迷ったら「利益が出てから」で、契約前に法人成りの可能性を本部へ伝えておく
- 本部が「個人のみ」「法人限定」を条件にしている場合があるので、業種別の比較ページで加盟資格の記載を先に見る
※税務の最終判断は個別状況によります。開業時に税理士へ相談することをおすすめします(創業期は無料相談を受けられる自治体・商工会議所も多くあります)。